籠に掛かっている布巾を捲ると中にはスズランの大好物の一つである揚げパン(チュロス)が沢山入っている。

「好きなだけ食えよ。じゃあ俺今度こそ寝直すから、あと昼過ぎまで起こすなよ」

「うん。ありがとうセィシェル」

　セィシェルは大きな欠伸を返事代わりにし、自室に続く奥の廊下へと入って行った。
　スズランはミルクと一緒に二つ程揚げパン(チュロス)を食べると、残りにまた布巾を掛けて棚に戻す。後で小腹が空いた時に頂くつもりだ。
　朝食に元気をもらったスズランは洗濯物を一気に干して早々に終わらせた。

「よし、今日もがんばろ！」

　気合いを入れ仕事着に着替えると、機嫌よく鼻歌交じりに午前の仕事をこなしていった。



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　祝祭(フェスト)初日の昨日程ではないが、本日も客入りはそこそこ多く賑わいを見せる酒場(バル)。
　この店のマスターであるユージーンと料理長 レフの二人が創り出すゆったりと落ち着いた店の雰囲気に癒しを求てやって来る客は多い。
　もう何年も〝一番人気の店〟として都では有名になっていた。
　もちろんスズランも店の看板娘として、その人気に加算しているのだが本人は露程も知らない。