ひどい言い様だが事実なので何も言い返せない。

「むうう……セィシェルの朝ごはん作ろうと思ったの」

「へ? 俺の朝飯?」

「うん、セィシェルがお風呂の間に急いで作ろうと思って……でもごめんなさい。だめにしちゃった…」

 皿の上には炭の様なパンらしき物が乗っている。苦し紛れに蕃茄(トマト)のソースを塗ってみたがもはや料理には見えない。セィシェルは何処か罰の悪そうな表情を浮かべ、濡れた髪を手拭いでガシガシと拭きながら小さな声で主張した。

「スズが作ってくれたやつなら食う」

「え?」

「あー・・・だから。それ、俺のなんだろ! 食うから」

「でも焦げてて…っあ…!」

 言うなりセィシェルは皿の上の物をさっとつまみ上げ、一口で一度に食べてしまった。直後、(にが)そうに顔を歪めたが何度か咀嚼し飲み込んだ。

「無理しなくてもいいのに…」

「無理してねぇよ。それに見た目よりもなかなかうまかったし」

「ほ、ほんと?」

「スズこそ無理すんなって、調理するのは苦手なんだろ? ほら、昨日作っといた揚げパン(チュロス)があるからスズはこっち食えよ。好きだろ? これ」

「……うん」

 セィシェルは棚の上の小さな籠を取りスズランに手渡した。