洗濯に掃除。皿洗いに食材の皮剥き等、スズランは家事全般の仕事も好きだ。自分が何かした事によって得られる達成感はどんなに小さなものでも嬉しく感じるのだ。
 それでも苦手な事はある。スズランの場合調理(・・)がそれにあたる。
 家事全般はどちらかと言えば得意なのだが調理だけは別だった。中でも火を扱う物が壊滅的だ。スズランが火を使い調理をするとどんなものでも真っ黒に焦げた炭の様な何かが出来上がる。セィシェルに言わせると火力の問題だとか……。
 そもそも幼い頃から毎日の食事はユージーンが作ってくれていた。近年では店の厨房に出入りする様になったセィシェルが作る事もある。二人の作る料理は流石飲食店を生業にしている事もあり、文句なしに絶品だ。
 今までに何度か見よう見まねで調理をしてみたものの、スズランにその才能は花開かなかった。今日も朝食位は自分で……と思い、パンを切って焼いてみたが案の定まっ黒焦げになってしまった。

「……なんでいつもコゲちゃうのかなあ…?」

「うわっ、焦げくせえと思ったら……また焦がしたな? パンも普通に焼けねぇとかうける」

 湯を浴び終えたセィシェルが浴室から出てきて皿の上のパンを見るなり口を開く。