朝の気配にふと目を覚ます。
元々寝付きも寝起きも良い方だ。十分に睡眠を取ったので意識も冴え冴えとしている。
スズランは朝の張り詰めている空気を思い切り吸い込み小さな肺を満たす。ベッドの上で思い切り手足を伸ばすと勢いよく起き上がった。
「んーー! 今日もいいお天気!!」
小窓を開け放ち澄み渡る青い空を見上げると、姿は見えないが小鳥たちの楽しげな囀りが耳に届く。もう少しこの歌声に聞き惚れていたいが、朝の支度をしなければならない。
寝間着のままそっと部屋を出る。ユージーンやセィシェルを起こさぬ様なるべく音を立てずに階下への階段を降りてゆく。
昨日は普段の倍所か予想以上の客入りだった為、遅くまで店を開けていただろうと容易に想像できた。店を閉めたのはおそらく明け方が近い筈だ。ユージーンもセィシェルもまだ眠りに就いたばかりかもしれない。
そう思っていた所、居間の長椅子にうつ伏せ状態で横たわるセィシェルを見つけた。
「…! セィシェル…、セィシェル!!」
「……う…んん」
急いで駆け寄りセィシェルの身体を小刻みに揺すりながら声をかけるが、なかなか目を覚まさない。