「えっと。もしかして他に何か用があった…?」

 休憩時にわざわざスズランの自室まで来たからには何か用事でもあったのか? と首を傾げる。

「べ、別に用って訳じゃあねーけど…。その。さっきは悪かったな、、って…」

「さっき?」

「っだから、店の事! さっきはいきなり手伝い禁止だなんて言って、悪かった…。でも俺は…、お前の事心配で…っあいつは、あいつだけは…」

 何処か頼りなさげな弱々しい口調に、スズランは振り向いてセィシェルを見上げた。

「平気だよ! セィシェルが心配して言ってくれてるの分かってるもん。だからわたしもあんまり気にしない事にする。それに、そこまで言うんなら本当にその人、とっても……変な人なんでしょう?」

 今までもスズランに近づく客には威嚇(いかく)的な態度を取ってきたセィシェルだが、これ程迄に警戒するのは初めてだ。やはり〝何か〟理由があるのだろう。しかしそれを追求して状況が変わる訳では無い。ならばもう気に停めない方がお互いの為だと思った。万感の想いを込めてセィシェルの瞳を見つめるも、一瞬で逸らされてしまう。

「……ま、まあな」

「近づかないって約束したもん、話しかけられてもお話しない事にするね!」