「解ってる。万理はもうこの世界には居ない。……でも! 生きてる。万理は生きてるんだ…、だからそれだけでいい…」

 自分自身を納得させる様な、それでいて望みを託す様なハリの言葉尻に、ラインアーサも希望を言葉に乗せた。

「そうか、そうだな。生きているなら、幸せを祈らずにはいられないな」

「……」

 変わらずカップの中身を見つめたままのハリにもう一言。

「ちなみに、俺はハリがスズランにした数々の事を赦すつもりはないけどね。一生」

「……君、その怖い顔も板に付いてきたんじゃあない?」

 やっとこちらに視線を寄越したハリは負けじと虚無的な笑顔を見せた。

「まあね。ハリにだって色々理由はあるだろうし? 一度シュサイラスアに戻ってゆっくり今後の事を決めたらいいよ。ハリの好きにしたらいいと思う」

 現在のルゥアンダ帝国の内情を知ってはいたが、ハリがそれを知った上で実質的にどう動くかはこちらが決める事ではない。

「別に、行きたい所なんて……」

「シュサイラスアはハリの第二の故郷なんだからそれでもかまわないよ。それに、一つお願いしたい事があるんだ。まだ秘密だけど」

「何それ」

「俺もあれから色々あってね」