その口振りの割には良く眠っていた様に見えたが。それもハリにとって久々の安眠だったのだろう、と思うとやはり申し訳ない気持ちになった。
「とりあえずお茶淹れるよ」
飛んでゆく景色を横目に、取っておきの茶葉で用意を進めるラインアーサ。透明で美しい銀朱色をした液体からは、芳醇な葡萄の香りが立つ。まるで淡く色付いた葡萄酒の様だ。
ぼんやりと車窓を眺めているハリ。目の前にお茶を注いだカップを差し出すと、躊躇いがちに受け取りながら口を開いた。
「……あのさ、本当に良いの?」
少し掠れたハリの声がラインアーサの耳に届く。
「何が?」
「何がって……君たちは、僕の事を怨んでる筈だ…」
ハリはじっとカップの中身を凝視し続けていた。
「ハリ。念を押すけど、俺とスズランがハリを怨むだなんて、そんな事は断固としてないよ。それに俺はハリとの約束を…」
「……万理の事なら、もういい」
「本当に、心苦しいよ…。俺の使える力は全て使ったんだ。でも見つけ出せたのはハリ、お前だけだった…」
ラインアーサがどんなに手を尽くしてもハリの家族を、彼の〝双子の姉〟を探し出すと言う兼ねてからの悲願は、ついに叶わなかったのだ。
「とりあえずお茶淹れるよ」
飛んでゆく景色を横目に、取っておきの茶葉で用意を進めるラインアーサ。透明で美しい銀朱色をした液体からは、芳醇な葡萄の香りが立つ。まるで淡く色付いた葡萄酒の様だ。
ぼんやりと車窓を眺めているハリ。目の前にお茶を注いだカップを差し出すと、躊躇いがちに受け取りながら口を開いた。
「……あのさ、本当に良いの?」
少し掠れたハリの声がラインアーサの耳に届く。
「何が?」
「何がって……君たちは、僕の事を怨んでる筈だ…」
ハリはじっとカップの中身を凝視し続けていた。
「ハリ。念を押すけど、俺とスズランがハリを怨むだなんて、そんな事は断固としてないよ。それに俺はハリとの約束を…」
「……万理の事なら、もういい」
「本当に、心苦しいよ…。俺の使える力は全て使ったんだ。でも見つけ出せたのはハリ、お前だけだった…」
ラインアーサがどんなに手を尽くしてもハリの家族を、彼の〝双子の姉〟を探し出すと言う兼ねてからの悲願は、ついに叶わなかったのだ。