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「……リ! …ハリ!!」
────規則的な音と不規則な揺れに合わせて、ラインアーサはハリの身体を揺り起こした。しかし当の本人は迷惑そうに眉根を寄せたまま瞼を閉じている。それでもラインアーサはお構い無しに耳元で大声を上げる。
「ハリ!! そろそろ起きろよ」
するとハリは薄らと開いた片目から鋭い視線をよこして渋々呟いた。
「……煩い」
全く。と小さな溜息が耳に届き、少々申し訳ない気持ちになりながらも、裏腹に緩む表情。
「もう起きろって、間もなく国境だってさ」
「……はあ。もう少し休めると思ったけどあっという間だね」
「そうだな」
ラインアーサは目の前で小さく欠伸をするハリに微笑みながら相槌を打つ。
「何にやにやしてるの? 気持ち悪い」
「いや。だって列車に乗りたいって言ったのはハリだろ? なんか嬉しくて。それにこの揺れが心地よく感じるのは俺だけじゃあないんだなって思ってさ」
「違う、少し休んだだけ。君と一緒にしないで」
「違うのか? まあ良いけど。じゃあ寝覚めにお茶は要らない? あ、それとも葡萄酒のが良かったか…?」
「お茶で結構。全く君って人は…」