「……ごめん。大事な時期なのに君の傍を離れないといけないなんて。五日…、いや三日で必ず帰る。だから俺を信じて待っててほしい…」

「うん。待ってるね…! わたしはもうひとりぼっちじゃない…。王宮のみんなや、大切な家族がいるから平気だよ。それに、ハリさんに会ったら直接言ってやるんだから! 〝ハリさんの意地悪~!〟って…!」

「はは! そうだな。あとは〝手厳しすぎるひねくれ二重人格!〟とか? じゃあ戻るまで他にも考えておいて。……よし、迎えに行ってくるよ。すぐに戻るから…」

 そう口にしたそばから不安が付き纏う。
 大切な人達とこの場所を、ひいてはこの世界(リノ・フェンティスタ)の平穏な日々を守りたい。その為にも必ずやり遂げなくてはいけない。果たして自分自身に成すことが出来るのだろうか。力を込めた拳が情けなくも震える。
 だがそれはスズランの言葉で完全に打ち消されてゆく。

「ライアなら大丈夫! ライア…。わたし、あなたの姿が見えなくても何時もあなたの事を想ってる。ライアと過ごす時間はわたしの大切なたからものだよ。それはこれからも、もしもこの世界(リノ・フェンティスタ)の終わりが来たとしても、絶対に変わらないって誓うわ。それに、これからもっとたくさんのたからものが増えるんだから! だから心配しないで。いってらっしゃい、ライア───」


 自分はなんて幸福なのだろう。

 ───今まで。
 彼女に再会するまで知らなかった。愛しい人に、同じ様に想ってもらえる事がこんなにも満たされるものなのだと。
 スズランというかけがえのない存在にめぐり逢えた。自分の全てを受け止めてもらえた。共に生きると誓いあった。
 それは本当に奇跡としか例えようがない。

 この深い愛を言葉に言い表すことは出来なくても、いつか互いに同じ夢を見てその時にこの二人の誓いを思い出せたなら───