その必死な物言いがどうしようもなく可愛らしい。だが、ラインアーサの気持ちだって負けてはいない。

「……ん、ありがとう。でも俺も負けないくらいスズランの事を想ってるよ。それに、本当に良いのか? 今、君の傍を離れるなんて事…」

 今はまだ不安定な時期な筈。何があるか分からないからこそ、出来るだけ傍にいたい。こちらの気持ちを察したのか、スズランが瞳の奥で微笑んだ気がした。

「あのね。わたしがハリさんの事を本当に理解するなんて出来ないけれどあの時、ハリさんの感情がわたしの中に流れ込んで来た時、思ったの」

「あの〝夢の中〟での事か」

 ラインアーサが相槌を打つと、スズランもこくりと頷いた。

「自分のものではない感情が…、一度に流れ込んできて、はじめはものすごい違和感で気持ち悪くなるの。全部上からぬりつぶされて自分が自分じゃなくなっていくみたいな…。なのに強制的に心が重なって、段々これは本当に自分の感情なんだって錯覚してしまうくらい…」

「…っ」

 言葉を失った。もしあの時に全てが上書きされ、彼女の感情が完全に消されてしまっていたら…。そんな事、あって良い訳がない。今更ながら身震いする。
 スズランは更に話を続けた。