木漏れ日が緩やかに翳っても二人の影は一つに重なったまま離れなかった。


 ───結局仕事を切り上げ、昼下がりを欲しいままに過ごす事にしたラインアーサ。
 くたりと脱力しながらも物言いたげな眼差しを向けてくるスズランを横抱きにし、自室へと引致した。柔らかい羽が大量に入った座蒲団(クッション)がこれでもかと並べてある長椅子(カウチ)。そこへそっと降ろすや否やスズランはその中の一つを抱きしめ、身体の半分以上を座蒲団(クッション)に埋もらせながら先程よりも強い視線で睨んでくる。

「もう…! ライアの馬鹿…っ、だめって言ったのに…」

「悪かったよ、無理させて」

「……むぅぅ」

 極上の笑みを浮かべ満足気に謝るラインアーサ。心のなかでは「でも可愛すぎるスズランがいけない」と言い訳をする。損ねてしまった機嫌が戻るまで二人の昔話に花を咲かせる事にした。
 
「覚えてる? 俺が初めてスズランにキスした時の事」

「お、おぼえてるよ! けど、あれはからかわれてるんだと思ってたし……その、わたし、キスなんてはじめてだったから…」

 羞恥に耐えきれず座蒲団(クッション)に顔を押し付けるスズランに追い打ちをかける。

「ふーん? でも俺の初めては幼いスズランに奪われたんだけどな?」