心地の良い静寂。
まだ真っ暗だと思っていたが、垂れ幕の隙間から一筋の陽光が入り込み、既に朝なのだと告げていた。
透き通る真っ白な肌と伏せられた睫毛を優美に照らしだす光の筋は、薄い千草色の髪を白金色に輝かせる。
あまりに美しい光景に暫くの間見惚れていた。だが、もしまた夢に囚われてこのまま目覚めなかったら……、という不安に苛まれてどうしようもなく胸がざわつく。
「…っ」
僅かに聞こえる呼吸音。ラインアーサは腕の中で整然と眠るスズランの寝顔を見据え、その唇に自身の唇を押し当てた。
「……ん…」
直に暖かな温もりを感じ取るが、それでも不安は拭い切れず、祈りながら深く口内を侵してゆく。
(……早く目をあけて…、スズラン)
強引に舌を吸いあげ、甘噛みしながら唇を貪る。散々と呼吸を乱されたスズランは酸素を求めて大きく身じろぎながら目を覚ます。
「んんぅっ…、ぷはぁっ…」
必死に呼吸を整える姿が可愛らしく、愛しさが込み上げてくる。まだ半分夢の中にいる様な不思議な表情の瞳がこちらへと向けられた。ここで漸く安堵したラインアーサは満面の笑顔をスズランに向けた。
「良かった! 起きた」