この温もりをずっと感じていたい。スズランはライアの背中に回した手にぎゅうと力を込めた。

「───おい…」

「…?」

「おいこら! 一体何時までそうしてるつもりだ?」

 懐かしみのある声が耳に届く。どきりとして静かに声の方へと視線を移すと案の定ベッドの脇に人影があった。
 見慣れた制服、定位置で組まれた腕。への字に結ばれた唇に、刺すような鋭い琥珀色(こはくいろ)の瞳。

「っ…!?」
(セ、セィシェル!!)

 しかし、今にも怒りを爆発させそうな仁王立ちのセィシェルがすぐ脇に居るのにも関わらず、唇を離してくれないライア。この状況で気づかない訳がないのだがそんな事はお構い無しの様だ。

(んんぅ…っ! ライア?)

 抵抗する様にライアの背中を軽く叩いてみても何も変わらない。

「早くスズを解放しやがれ!」

 痺れを切らしたセィシェルに詰め寄られ、ライアは漸く目線だけを声の主に向けた。

「ん? ああ、セィシェルか」

「なっ! この変態ロリコン王子!! いい加減にしろよ?」

「……いつから居たのか知らないがあまり行儀が良いとは思えないな」

「うるせぇ! スズが目を覚ましたならすぐに知らせるのが常識だろ?」