「ま、まって。わたし、そんな…」

 ずっとライアに感じていた違和感の正体がやっと分かった。それ程長く眠っていたのだとしたら説明がつく。だがどうしても思考が追いつかない。スズランの記憶はあの日、能力(ちから)を使った時のまま止まっているのだから。

「待つのは慣れてる。だけどもう耐える事は出来ない…」

「あっ…」

 再びベッドの上に押し倒されていた。両腕に挟まれて身動きが取れなくなる。月日が経った事によって更に大人の色気が増したライア。真っ直ぐに見つめてくる瞳は少し震えていた。それでもなお情熱的な眼差しはスズランを焦がしてしまいそうな程だ。

「……今から俺の全てを教えようか?」

「ライアの、全て?」

「俺が……本当はどんな人間で、どんな風に育ってきたか。本当は情けない程にどうしようもない奴で、目的の為ならそれなりに狡くて酷い事だってして来た。なのにたった一人の大切な人をちゃんと守りきれなかったんだ」

 スズランを見下ろしたまま、自分を責める様に顔を顰めるライア。

「…っ」

「そんな自分が許せなくて、それでもがむしゃらに出来る事を精一杯やってるつもりだった。でもやっぱり駄目なんだ。俺は君が傍に居ないと耐えられない…!」