スズランはゆっくりと身体を起こし、緊張した面持ちで質問した。一体どれだけの間眠っていたのだろう。まず現在の状況を把握しなければ。加えて何故、酒場(バル)の自室のベットに寝ているのかも疑問だった。部屋を見渡し、以前と全く変わらぬ状態な事にも驚いている。

(だってセィシェルはここを物置にするって、言ってたのに…)

 確かにそう言っていた筈だ。何故ならスズランは一度、自国へと還ったのだ。両親の待つフラウール宮殿へ。
 〝フリュイ公国の公女〟として───。

「どのくらいだと思う?」

 ライアは少し意地悪そうに首を傾げる。その姿はスズランの見知った物とは違っていた。ライア本人である事は明白だが、やはりどこか大人びている。

「えっと…」

「知りたい? 今日はすごく特別な日なんだけど、何の日かわかる?」

「……特別な日」

 何かの記念日だろうか。今の季節さえも覚束無いのだ、考えてみたが皆目見当もつかない。降参だと首を横に振る。

「今日は、君の誕生日なんだ。十八回目の」

「え…っ! 誕生日、、って十八? うそ、じゃあわたし、そんなに…?」

「そう。誰より早く今日という特別な日を祝えて嬉しいよ。誕生日おめでとう、スズラン」