耐えきれず俯いていると耳の傍で囁かれる。

「悪かったよ本当に……代わりにはならないだろうけど俺も、俺の全てを君に教える、、それじゃあ駄目?」

「全て…?」

「お願いだ、どうか一緒に目を覚まして…」

 請う様に顔をのぞき込まれた。

「ううぅ…、ライアもぜんぶ教えてくれるの? ほんとうに…?」

 頬を抑えながら恐る恐る視線を合わせるとライアは潤んだ瞳を切なそうに細めた。

「勿論。だから俺の傍に戻って来て……」

 指を絡め取りそのままスズランの掌に頬をすり寄せるライア。

「…っ」

 触れた所から伝わる体温で溶けてしまいそうになり思わず吐息を漏らして瞳を閉じた。


「───スズラン」

 優しい声音が鼓膜を揺らす。少し低めの、耳に心地の良い声。瞼がじわりと熱くなってゆく。呼び声に応えようと口を開いた。

「……んぅ、、ライ ア…」

 掠れる声。

「スズラン!」

 黄金色の光が瞼をゆっくり持ち上げる。
 差し込む色に目が眩んだが、次の瞬間覆い被さるライアの身体で何も見えなくなった。まだ感覚が戻りきっていないが強く抱きしめられているのだと分かった。次いで嗅覚が目を覚まし、柔らかで落ち着く香りが鼻腔を満たす。