ライアは素早く目尻を拭ったがスズランを抱き締める腕の力は緩めなかった。

「あ、謝るって、どうして?」

「許しもなく勝手に夢に入った……スズランを捜す為とはいえ、君の大切な思い出を無断で踏み荒らしてしまった」

「そうなの?」

 そう言われても特に実感が湧かない。
 確かに夢の中でこうして会話出来ているのも不思議なものだと首を捻る。だがライアは至極面目なさそうに続けた。

「つまり、その……たくさんの過去の思い出の中、君の意識を捜した。何度も捜してるうちに俺の知らない過去や以前の出来事、その時にスズランが考えていた事なんかも、、その他にも色々と勝手に暴いてしまったから…」

「っ…そうなの?? えっ、それって、もしかして…、ええぇ?」

 という事は。まさか。他愛のない日常生活の全てから、過去必死に隠してきたライアへの想いや、その行動までもが殆ど筒抜けになった……という事なのだろうか。それはかなりの一大事である。本当だとしたら酷く決まりが悪く、慙愧に堪えない。

「そうなんだ……本当にごめん」

「〜っ…そ、そんなの、、ずるい…!」

 俯き、震える声でそう返すのがやっとだ。もはや恥ずかし過ぎてどうにかなりそうだ。