寧ろ心配なのはライアの方だ。廊下でハリと対峙した際に受けた攻撃で大怪我をしたのだから。

「そんな! ライアこそ怪我は…っ平気なの? 早く手当て…」

「ん? あれは過去の出来事だから今の俺は無傷だよ、ほら。……でも、間に合って良かった。例え夢でも今度は君を守れたから…」

 言われてから再度はっとなる。本来であれば、あのまま首を絞められて意識を手放している筈だった。そう考えると過去の出来事でも背筋が冷たくなる。
 そして先程からずっと抱きしめられたまま密着している為、どうやっても目の前の端整な顔立ちに照れてしまう。

(っうぅ、ちかいよぅ…っ、それになんか…)

 よく見ればライアの服装や髪型が当時とはまるで違う上に更に大人びた印象を受けた。
 まだ思考に多少の混濁は残るが、次第に状況が把握出来てくる。冷静に考えると今までの自分の行動が酷く愚かに思えた。
 傷つくのが怖くて夢の中へと逃げたのだ。〝そうする事でしかライアの力になれない〟と自分に言い聞かせ、そう思い込んでいた。
 ───自らを犠牲にしてこの世界(リノ・フェンティスタ)を守ったライア。満身創痍だった彼を救いたかった。その気持ちだけは本物なのに、何故一人で強情を張ってしまったのだろう。
 きっと何度謝っても足りない。