共有は止まった様だが何やら辺りの様子がおかしい。

「!? 医務室が…」

「スズラン! 無事なのか?!」

 ライアが驚きながらスズランの顔を覗き込んでくる。

「平気…、みたい。でも周りの様子が…」

「本当か? っ…良かった…。ああ、それは此処が夢の中だから」

 此処がそうだという事をすっかりと忘れていた。これは夢であり過去に起きた出来事でもあるが、全てが現実では無い。

(!! じゃあハリさんは…?)

 慌てて確認すると、倒れたままのハリの輪郭が朧げになっていた。暫くすると医務室もハリも溶ける様に消えてしまい、何も無い空間にライアと二人残される。

「全部、夢だったのかな。……もしかしてライアも消えちゃうの?」

「夢だけど感情は本物だよ。俺はスズランの夢の中にある過去の記憶に外部から侵入したんだ。だから消えない。でも、さっきハリが放った言葉や感情はハリ本人の本心が作り出したものだよ」

「……」

 だとしたら先程胸に流れ込んできた真っ黒な感情は本物であり、ハリは常にあの複雑な苦しさに囚われていると言う事だ……。

「心配? ハリの事」

「えっ?」

「そう顔に書いてある」

 何故か拗ねた口調のライア。