───スズラン……
君は今何処にいるんだ…。
どんな夢をみて、どんな想いを廻らせているのだろうか。たとえ夢の中でも、君が辛い思いをしているのなら助けに行くから。
君が毎晩見る夢に必ず現れて、すぐ側で守りたい。
必ず行くから、待っていて。
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「……ん…。もう時間、か…」
ラインアーサは羽の入った柔らかな枕に伏せていた上半身をゆっくりと起こす。その反動で頭がくらりとした。まるで貧血を起こしたかの様にくらくらとする頭を片手で支える。もう片方の手はラインアーサの熱を共有して温くなった華奢な指先に繋がれていた。
漸く目眩が治まり、繋がれている手から上へと目線を辿っていく。
規則正しい呼吸によって上下する胸。
細く、白い首筋。
引き結ばれた小さな唇。
瞼を縁取る長い睫毛は伏せられているが、ゆり動かせば今にも目を覚ましそうである。
しかし、その瞼が開かれることは決してなかった。この状態になってから随分と月日が経つ。その間、ラインアーサは一日も欠かさず、毎日この部屋へと赴いた。
つぼんだ花の如く、深い眠りについたまま目を覚まさないスズランの部屋に。