夜の帳が降り、収穫祭は更に盛り上がりを見せる。観光客で溢れかえる街。しかしどれだけの人に溢れていてもライアの瞳が捉えているのはスズランだけだった。怖いくらい真剣な眼差しにぞくりとする。
「……スズラン、俺…」
「あっ! あれってなんだろう?」
はぐらかす訳では無いが急に気恥しい気持ちがせり上がってしまい、一際賑わっている屋台の方へと駆け出す。ライアも手を繋いだままついてきてくれた。
「ああ、これは果実茶の屋台だよ」
「果実茶って甘いの?」
(気になってたやつだ!)
「飲んだ事無いなら買ってみる?」
「ほんと!?」
「じゃあ並んでみるか」
シュサイラスアは様々な作物が収穫出来る。今年の収穫祭で栄光に輝いたのは南瓜だが、昨年は葡萄だった様に果実も多くの種類が獲れる。その為様々な加工品が作られており、近年果実茶が流行りだしたのだ。
その存在を知ってからは気になっていてのだが、ほとんど街に出ないスズランには無縁の代物だった。気になっていただけに、心を躍らせて屋台の列に並んだ。
ライアと二人、手を繋いで……。
───ああ、なんて幸せな夢だろう。
こんなに楽しい夢ならば、このまま目覚めずにずっと眠っていたい。
こんなにも幸せな夢ならば。
忘れたくない。
一生忘れられない大切な思い出。
ライアとのたいせつな思い出。
目覚めた瞬間、大切な宝物たちが跡形もなく消えてしまいそうで怖い。
だから、どうかこのまま眠らせて。
まだ、起こさないで───。
⌘ うつろう折節 ⌘ 終
「……スズラン、俺…」
「あっ! あれってなんだろう?」
はぐらかす訳では無いが急に気恥しい気持ちがせり上がってしまい、一際賑わっている屋台の方へと駆け出す。ライアも手を繋いだままついてきてくれた。
「ああ、これは果実茶の屋台だよ」
「果実茶って甘いの?」
(気になってたやつだ!)
「飲んだ事無いなら買ってみる?」
「ほんと!?」
「じゃあ並んでみるか」
シュサイラスアは様々な作物が収穫出来る。今年の収穫祭で栄光に輝いたのは南瓜だが、昨年は葡萄だった様に果実も多くの種類が獲れる。その為様々な加工品が作られており、近年果実茶が流行りだしたのだ。
その存在を知ってからは気になっていてのだが、ほとんど街に出ないスズランには無縁の代物だった。気になっていただけに、心を躍らせて屋台の列に並んだ。
ライアと二人、手を繋いで……。
───ああ、なんて幸せな夢だろう。
こんなに楽しい夢ならば、このまま目覚めずにずっと眠っていたい。
こんなにも幸せな夢ならば。
忘れたくない。
一生忘れられない大切な思い出。
ライアとのたいせつな思い出。
目覚めた瞬間、大切な宝物たちが跡形もなく消えてしまいそうで怖い。
だから、どうかこのまま眠らせて。
まだ、起こさないで───。
⌘ うつろう折節 ⌘ 終