「ふふ。手はこうしてしっかり繋いでおけば迷子にならないだろ?」

 指を絡めて強く手を握り直すライア。その暖かさに安心する。反面、あまりの人混みに酒場(バル)が心配になってしまう。

「きっとお店も混んでるよね、大変じゃないかな? わたし戻った方が…」

「心配?」

「心配って言うか、みんな忙しいのにわたしだけこんなに贅沢していいのかな? って…」

「ごめんな。無理言って連れ出して」

 申し訳なさそうに眉を下げるライアに慌てて訂正をする。

「そんな! わたし、こうやってライアと二人で街に来れるなんて夢みたいで、それだけで贅沢って言うか……どうしよう…っ、すごい嬉しくて…」
(こんなの…、ほんとうに夢みたい…)

「そうか…! 俺もこうして二人で居れるのはどうにかなりそうな位嬉しいよ。……あいつにも今度礼を言わないとな」

 以前街で助けてもらった時にも二人で街を歩いた。だがあの時は互いに嫌われていると思っていたのだ。とてつもなく気まずくて緊張したのを覚えている。今回も急に二人で出かける事になり緊張はするが、幸せな時間である事には変わらない。
 ライアの手をしっかりと握りながら人混みを縫って歩く。スズランはふと、ある事に気が付いた。