(わたしの出身国! ……わたしの、産まれたところ…)

 しかし何故コルトがそんな事まで知っているのだろう。謎ではあるがにっこりと微笑む彼の圧の強さに〝敢えて聞かない〟という選択肢を選んだ。

「殿下の前でどーんとアピールしちゃってください!」

「わかりました!」

 不意に、扉の向こうから良く通る声が……ライアの想いが強く乗せられた言葉の数々がスズランの耳に届く。

(っ…!)

 〝それ〟はスズランに向けられた嘘も偽りもない、誠心誠意の言葉だった。
 ───いつからそんな風に想っていてくれたのだろうか。ライアの想いがスズランの身体を芯から熱くする。
 だがそう公言してしまえば、その場に居る令嬢達だって黙ってはいない筈だ。

「……わたくし達の中からその一人を選んで頂く事は出来ないのですか? わたくしはこの国を一緒に支えていく覚悟の上で此処に居りますので!」

 案の定、叫びにも似た令嬢の声が廊下にまで漏れる。このままではライアに非難の声が集まってしまいかねない。そう思ったら居ても立ってもいられなかった。

「……ああ、やはり会場は随分と賑やかな事になってますね」

「コルトさん…! わたし、行かなきゃ…」

「ええ。せっかくですので派手に参りましょう!」

 コルトは嬉しそうな笑みを浮かべて思い切り広間の両扉を押し開けた。扉が大袈裟な音を立てて開いてゆく。コルトに続き、意を決して広間に飛び込む。


 ───燦爛と輝く照明。純白の装飾品で統一された美しい会場。一瞬でも気を抜けば目眩を起こしてしまいそうな程に煌びやかな空間。
 集中する視線をものともせずスズランは顔を上げ、広間の中央を目指した。

 かけがえのない、愛しいひとの傍に。