「お呼びですか？」

「リーナね、入って！」

「失礼します」

「！！」

　部屋へと入ってきた女性を見た瞬間、脳裏にある人物が思い浮かんだ。
　赤茶で癖毛の髪に、明るい緑の瞳。少し垂れた優しげな目元。可憐で女性らしい雰囲気なのだが、その容姿は警備隊員であるジュリアンととても良く似ているのだ。おそらくこれが先程からコルトやサリベルに感じていた既視感の正体だろう。

「スズラン様。私と同じくこの王宮に仕えております、娘のリーナです。リーナ、手伝ってちょうだいね」

「……はい…。リーナと申します。初めまして」

　ほんの一瞬、リーナから鋭い視線を向けられた気がしたがすぐに柔らかな笑みに変わりどきりとした。スズランも挨拶を返す。

「は、はじめまして。スズランと申します！」

「……では早速ですがお着付けをしていきましょう！」

「はい…！」

　いよいよ晩餐会の為のドレスを着るのかと身構えた。しかしサリベルは何やら唸りながら、何体かあるドレスを着た等身像(トルソー)の前を行ったり来たりしている。

（っわあ、こんなに装飾がたくさんのドレス、絶対に着こなせないよ…）

　スズランの目にはどれも豪華で華美な光彩を放っている様に見えた。