柔らかい光が翳る。
橙色に染まる森。
間もなく地平線に陽が隠れる。
早くしないとまた夜の帳が下りてきてしまう。
待っていた。来る日も、明くる日も───。
幼い身には永遠の時に感じられた。いくら待てども目的が果たされることはなく月日ばかりが流れてゆく。次第に何を待っていたのかも忘れてしまいそうだった。そうしてまた一日が過ぎる。
小川の畔で小さくしゃがみ込む少女に穏やかな風が吹いた。
『───大丈夫、平気だよ。必ず見つけてくれるから…』
不思議な声に何故か強い確信を持って頷くと、少女は再びしっかりと瞳を閉じてその時を待ち続ける。
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「……ん」
暖かく麗らかな光。柔らかで落ち着く香り。
天気が良い日のお日様と風の匂いだ。
極上の心地良さにいつまでも身を委ねていたい。しかし寝返りを打つと上掛けの隙間から冷たい空気が入り込み、もぞもぞと身じろいだ。
「……もう朝…?」
仕方なく瞼を持ち上げると、普段よりもあどけない表情で眠るラインアーサの顔ばせが眼前に飛び込んでくる。整然たる呼吸は深く、まだまだ起きる気配はない。
スズランはこの幸せそうな寝顔を夢見心地で見つめた。