「っ…え、まっ…あの……それ、先に言うの反則…」

 途端に動きが固くなり、驚きに言葉を詰まらせるライア。それとこれとは別で、やはり受け入れられないと言う事なのだろうか。
 たとえそうだとしてもこの想いを言葉にした事に後悔はない。誰に反対されても、本人にどれだけ牽制をされても、どうしても伝えたかった。
 肝心の返答はやはりなく、戸惑うライアの瞳をスズランは必死に見つめ返した。

「やっぱり……だめ、なの?」

「だ、駄目な訳ない…!! けど、俺だって……ああ! もう、かっこ悪いな俺! 待って、ちゃんと俺からも言わせてくれ……」

 駄目ではない。
 その言葉を聞いて目の前の肩に凭れかかった。

「……よかった…、だめじゃなくって嬉しい…」

 半ば強引に答えを聞き出してしまった事を恥ながらライアの胸元をぎゅっと握った。するとライアは優しい手つきで髪を撫でてくれた。
 だが忘れてはいけない。彼は誰にでも優しく、献身的なのだ。嬉しい筈なのに心臓が痛んだ。それでもライアの腕の中は心地がよくてスズランはそのまま瞳を閉じた。優しくて大きな手が幾度も髪を撫でてくれる。まるで幼い子どもをあやす様に……。

(ライア……今わたし、すごく嬉しいの…。ライアが無事で、本当に良かった……でももう、無理しない、で…)

 少し低めで耳に心地の良いライアの声。もっとその声を聞いていたいのに、麗らかな太陽に包まれて全身が溶けてゆく。
 
(お願い…。もうどこにもいかないで……)

 あたたかい陽だまりの中で何処までも甘やかされている子猫の様な、そんな気分になる。安堵しきったスズランはそのままライアに身を預けた───。