改めて口に出すと、自分の愚かな勘違いやライアとの身分の差に打ちのめされる。本来ならばこんな風に気軽に話す事など出来ない筈だ。
 身の程を弁えなければ。

「俺は偉くなんかないよ…! スズラン。俺の真の名は、ラインアーサだ」

「……ライン アーサ…?」

「そう。ラインアーサ・S・(シュサイラスア)ローゼン」

「…っ…やっぱり。それって、この国の王子様の名前…。ライアは、アーサ王子で、本当はわたしなんかがこんなふうに気軽に接しちゃ、だめなんだよね…?」

 紛れもなくシュサイラスア大国の王族のみが名乗る事の許されているその名に、身分差を再認識してしまい声が震える。

「っ…駄目じゃあない!!」

「……ほんとう…? だって、あなたは」

「っ…俺だって。……スズランの事をもっと知りたくて、もっと話をしたくて嘘をついたんだ。警備隊の一人になりすまして、そうすればスズランと会える。また話が出来るかもしれないって…」

「……わたし、警備さんがライアなら良いのにって……いつも思ってた」

「俺って分からなかった?」

 ライアは少し腕をゆるめ、困った様な瞳で見つめてくる。全く分からなかったか、と言われればそれは少し違う。