その甲斐あって裏庭の仕事は完璧にやり終えた。いつ夫々(それぞれ)の業者が空の瓶や樽を取りに来ても大丈夫だ。

「───ふぅ。少し張り切り過ぎちゃったかな」

 流石にこの量を一人でこなしたのは初めてだった。空を見上げるとほんのり茜色に染まっている。予定よりも早く仕事を終わらせる事が出来、安堵の息を吐いた。

「お客様いっぱい来るかな? 朝から準備してたからもうくたくた……あ、そうだ!」

 スズランは酒場(バル)が開店するまでの空いた時間ここぞと〝例の場所〟へと足を進めた。ほんの少し息抜きをするだけ……と立入禁止区域の森へと入って行く。
 まもなく日没。辺りは既に薄暗くなって来ていたが相変わらずこの王宮の庭には心地の良い風が吹き抜け、小川は西日を反射して煌きながら川岸の花々を引き立てている。

「いつ見ても本当にきれい…」

 スズランはその様子を石橋の上から飽きることなく眺めていた。慣れていないのもあるがあの様に賑やかな祭りや人混みはあまり得意ではない。

「なんで王様も街の人もそんなにお祭りが好きなんだろう…? わたしはちょっと気後れしちゃう。……お祭りは賑やかでたのしいけど、お祭りが終わった後って少しさみしい……それに、少し怖い」