そっと瞼を持ち上げる。
 ライアは立ち膝の低い姿勢のままスズランを強く描き抱くと安堵した様に囁いた。

「……よかった。何処もぶつけてない? 膝は大丈夫か?」

「…っ! あっ…は、離してくださいっ! 平気だから!」

 突然の密着した体勢に動揺し、声が上擦ってしまう。スズランの言葉に若干手を緩めるがライアはまるで叱られた後の子供の如くしょげた声を出す。探る様に慎重に問われる。

「……怒ってるのか? スズラン」

「っ…」

 スズランは腕の中で激しく首を振った。

「じゃあ、なんでそんな…」

「だって…っ心配したんだから…! あのままライアが消えちゃって……わたしのせいで…っ」

 視界がじわりとぼやける。泣くまいと堪えてみるも、瞳の縁はいとも簡単に決壊し大粒の涙となって零れ落ちた。

「スズランのせいじゃあない! 俺は、、俺がスズランを守りたかったんだ! 決めたんだ、必ず守るって!!」

 そうは言ってもライアが危険な目に遭うなど耐えられないのだ。それはライアの身分を抜きにしても変わらなかった。
 両肩にライアのあたたかな手が添えられる。もしこの手が酷い怪我でもしたら……そう思っただけで心が痛む。