長い時間ベッドの上で静かに抵抗していたが、次第にこの膠着(こうちゃく)した事態に腹が立ってくる。

「……どうしてライアはわたしの身代わりなんかに、、ライアはこの国の王子なのに、なんでこんな馬鹿な事……ライアの、馬鹿…」

 そう口に出してすぐ本当に愚かなのは己だと卑下した。

「本当に馬鹿なのは自分じゃない…っわたし、なんでこんなに役立たずなの? 何も出来ないなんて嫌だよ…。ライアの足手まといに、なりたくないのに……」

 ライアが無事で帰ってきたらもう二度と危険な事はしないで欲しいと伝えなければ。増してやそれが自分を庇うなどとと言う事態は絶対にあってはならないのだと……。
 暫く膝を抱えて俯いていたが、足先に何やらあたたかなぬくもりを感じた。

「…? ……あったかい」

 気づけば窓から黄金色(こがねいろ)の光が差し込んで来ていた。先程の通り風が厚い雨雲を吹き飛ばしてしまったのだろうか。
 それは久方振りに浴びる太陽の光だった。

「まぶしい…」

 きらきらと眩しい光は、僅かに視線を上げただけで目に沁みるほど強烈に明るい。眼底まで眩みそうになりスズランは背ける様に再び顔を腕に押し付けた。


 ───そうだ。早起きした時の透き通った空気が好きだった。