雨の真っ暗な森。
 抑揚のない冷たい声が闇の中から発せられる。

「───来ると思ってたよ…」

「ハリさん!」

「だいぶ辛そうだね……かくいう僕もこのままだと流石にきついけど」

 実際まだ頭痛による痛みが引いていない。
 奇妙な事にスズランとハリは同時に頭痛や目眩や耳鳴りに見舞われているのだ。それは互いに共鳴している様にも思えた。

「お願いハリさん…、ライアの所に行くのでしょう? だったらわたしを一緒に連れて行ってください!」

「なんで?」

「っ…わたしが行けば、この一連の誘拐事件を終わらせる事が出来るかもしれないんです! わたし、ライアを助けに行きたいの!!」

 こんな自分がライアを助けたいなどと滑稽かもしれない。それでも必死なのだ。案の定ハリは堪えきれずと言ったふうに息を漏らす。

「くくっ…あっはははっ! そうだね、確かに終わるかも」

「じゃ、じゃあ…」

「でも、やだ。……別に僕は事件とかどうでもいい。でももう1人の自分がやけに行きたがってる、だから渋々行くだけ。それに……彼奴らに鈴蘭を渡して本当に〝奴〟が目覚めでもしたら面倒臭い…」

「え…?」(もう一人の自分…? それに誰かが…、目覚めるの?)