「ありがとうございます、まだ少し頭痛が…。でも平気です! あの、わたし…、ハリさんを探してきます!」
「スズ?!」
「え? あっ、待って! 今無闇に外に出たら駄目だって…」
そう叫ぶジュリアンやユージーンたちの意表を突いて性急に駆け出していた。裏口から飛び出し、そのまま裏庭から立ち入り禁止区域である王宮の森の中へとずんずん踏み入ってゆく。
綿々と降り続けていた地雨など気にも留めず足を進める。
〝秘密の場所〟もとい王宮の横庭まで一気に駆け抜けて小川に掛る小さな石橋の上で立ち止まった。冷たい橋の欄干に手を付き乱れた息を整えるとスズランは大きく息を吸い込んだ。
「っ…ハリさん! いるんでしょう?!」
張り上げた声は虚しくも雨音と森の闇夜に吸収される。それでももう一度叫んだ。
「ハリさん! お願いっ! ライアの所に行くならわたしも連れて行って!!」
辺りを見渡し返事を待つが、何の反応も無い。大粒の雨が樹々の葉に当たって弾ける音がやけに大きく聞こえる。むしろそれしか聞こえない。
間に合わなかったのだろうか。
諦めきれずもう一度叫ぼうとした瞬間、目の前の闇がゆらりと妖しく動いた───。
「スズ?!」
「え? あっ、待って! 今無闇に外に出たら駄目だって…」
そう叫ぶジュリアンやユージーンたちの意表を突いて性急に駆け出していた。裏口から飛び出し、そのまま裏庭から立ち入り禁止区域である王宮の森の中へとずんずん踏み入ってゆく。
綿々と降り続けていた地雨など気にも留めず足を進める。
〝秘密の場所〟もとい王宮の横庭まで一気に駆け抜けて小川に掛る小さな石橋の上で立ち止まった。冷たい橋の欄干に手を付き乱れた息を整えるとスズランは大きく息を吸い込んだ。
「っ…ハリさん! いるんでしょう?!」
張り上げた声は虚しくも雨音と森の闇夜に吸収される。それでももう一度叫んだ。
「ハリさん! お願いっ! ライアの所に行くならわたしも連れて行って!!」
辺りを見渡し返事を待つが、何の反応も無い。大粒の雨が樹々の葉に当たって弾ける音がやけに大きく聞こえる。むしろそれしか聞こえない。
間に合わなかったのだろうか。
諦めきれずもう一度叫ぼうとした瞬間、目の前の闇がゆらりと妖しく動いた───。