見上げると何処か物憂げで寂しそうなユージーンの瞳と視線がぶつかった。

「ああ、本当さ。そう約束したからね……」

 ───そうだ。あの日そう約束したのだ。
 いい子にしていたら迎えに来てくれると……。自分は決して捨てられた訳ではなかったのだ。

「……」

「さあスズ。これ以上はダメだ、もう部屋に戻りなさい」

「どうして?」

「どうしてもだ。このままだと警備隊の皆様の邪魔になってしまうよ」

「警備隊の、みなさまの邪魔? …っ」

 その言葉を耳にした途端、また別の感覚が張り詰めた。ざわりとした空気に、一瞬で意識が現実へと引き戻される。
 そして辺りを見渡すとハリの姿が無い事に気づく。

「ああ、マスター。俺たちなら大丈夫ですよ。お構いなく…」

「ジュリアンさん! あの……ハリさんは?」

 スズランはふらつきながら立ち上がるとジュリアンに向き直った。

「ん? ああ、ハリならさっき具合悪そうに外の空気吸いに行くって出てったけど…。あいつさ、普段はあんな態度じゃあないんだけど今日は妙に当たりが強くて……なんだかごめんね? スズランちゃんこそ具合大丈夫?」

 こんな時にまで気遣いを見せるジュリアンに頭が下がる。