アスセナスの必死な声が酸素を求め藻掻くスズランの耳に届く。

(く、くるしい……なんで、こんなことをするの? どうして…)

 先程から何度となく考えているがスズランにはどうしても理解できなかった。少年たちが何を持って他者を傷つけるのかを。その上で何故泣いているのかを。ただ目の前の少年から滲み出す激しい感情に心が痛くなった。

「チッ。そう言って、善人ぶってるだけなんだよ。あんただってそうに決まってる……自分がヤバくなったら真っ先にこいつを切り捨てる癖にっ!」

「切り捨てるだと? ……僕はその子が助かるのならこの命を捧げても構わない…。スズが産まれた時に、己の身魂の全てをかけてでも守ると誓った! まだここで死ぬ訳にはいかない!!」

 思い定める様なアスセナスにはっとなる。

「ま、まって…。パパっ!」

 しかし次の瞬間、閃光が走り辺り一面を清白(せいはく)に染めた。その場にいる誰もが目を開けていられない程の耀きに加え、(そら)から降り注ぐ微粒子が身体の自由を奪う。
 但し、アスセナスとスズランを除いて。

「ぅわっ! 眩しい…!」
「な、なんだ!? 身体が痺れて…、動けねえっ、くそ!!」
「兄貴…っ…目が…、目が開かねえ!」