反動で倒れ込むとアスセナスはぐったりと動かなくなり地面には赤い体液が広がっていく。

「や、やあぁっ! パパ!!」

「……純血に近い貴方にはきついでしょうね。どうです? 身体中を悪意で切り刻まれる感覚は。……さあ、おじょうちゃんは大好きなパパがこれ以上衰弱する前に私とママの所に行きましょう」

 また先程の猫撫で声で近づいてくる男。

「いや! おじさんはパパをいじめるわるいやつらだもん! ぜったいにいや!」

 負傷したアスセナスを守る様にして縋り付く。恐怖で身体が震えるも、涙が一杯に溜まった瞳で男を睨みつけた。

「これはこれは、聞き分けの悪い子ですねぇ。でしたらパパとはここでお別れという事にしましょう! そもそもおじょうちゃんはこの世に産まれてくる前からとうに玻璃(ハリ)様の〝物〟。その首輪が何よりの証拠…」

 〝物〟という言葉にアスセナスがぴくりと反応した。

「……ち、がう…。スズは誰の、ものでもない…! ましてやお前たち帝国の皇子などに…っ」

「はあ…、大人しく寝ていればいいものを。どうやらもう一度これの餌食になりたい様ですね。流石の貴方でも今度は命を落とし兼ねないですよ?」

「……スズは、絶対に渡さない…!」