「馬鹿ですねぇ。どんなに逃げても無駄ですよ? 貴方たちの気配は何処にいても手に取る様に分かるのですから」

「っ…?!」

「まさか、知らないのです? 雷花の神気(トニトフロース・ディオス)。貴方たちの放つそれは大層派手だという事に」

 男は二人の目前に立ちはだかると、くつくつと声を出して嗤った。

「ま、まさか祈りが…?」

「そう。特にその娘の気配は大きく、リリィオス公の物に匹敵……いや、それ以上かも知れぬ故。必ずや我が皇帝を目覚めさせる鍵となる筈」

「…っ!」

「貴方とて、もう一度愛する妻に会いたいでしょう? その娘を使えばあの暗い大地に淋しく眠るリリィオス公を解放出来るのですよ?」

「でたらめを…! リリィの意志は硬い!!」

「論より証拠、です。ならば試してみましょうよ? さあおいで、おじょうちゃん。ママに会いに行きましょう? 私がママの所へ連れて行ってあげますよ??」

 男がやけに優しく媚びた声でスズランに話しかけてくる。

「ほ、ほんとうにママにあえるの…?」

「ええ、もちろん」

「黙れ! 嘘をつくな!!」

「おや、嘘だなんて…」

「スズ、そいつは悪い奴だ! パパたちを騙してまた世界を壊そうとしている…!」