ひどく懐かしい、優しい声が聞こえた。
「───お願いがあるの。あなたはこの子を連れて安全な所へ…」
「なっ!?」
「私はここに残らないと」
「そんなの駄目だ…っ、君をこんな所に置いて行けない!」
「でも…、じゃないとこの子が…! 私そんなの絶対に嫌! 耐えられないもの…」
「君と僕で守ればいいっ…、それに何故君が一人でやらなければいけない…? 何故君なんだっ…」
「……大丈夫、一人じゃないわ! ガトーレ司祭が来てくれる筈。だからきっと上手くいく。この世界をこんな風にした奴を懲らしめてやるから!」
「……どうしても…?」
「誰かがやらなきゃ…」
「っ…リリィ!」
「スゥを……スズランをお願いね。この子、あなたに似てとっても泣き虫なんだから…」
「リリィ……っ必ず、生きて…っ」
「大丈夫よ。アス、スズラン。私、あなた達の為なら頑張れるわ──・・・」
(だめ! だめだよママ。パパはさみしがりなの。ママがいなきゃだめなの! おねがい、いかないで!!)
スズランは強烈な眠気に抗いながら、恐ろしくてたまらない筈の〝雷〟に祈った。
しかし怒り狂う様な稲光と雷鳴がその祈りを叶えることはなかった───。