ユージーンは部屋を出ると階段を下りながらセィシェルと似た事を問いかけてきた。スズランの答えはもちろん───

「うん! 少しでもお店の役に立ちたいの! 駄目?」

 ユージーンの背中を追う様に階段を下るスズラン。

「駄目だなんてそんな事はない。スズのその気持ち、とても嬉しいよ。ただ何かあったらすぐに知らせておくれ。特にセィシェル、あいつは心配性だからね」

 そう言うユージーンもかなりの心配性だ。

「うん! わかった。でもセィシェルったらひどいの! わたしのこといつもこども扱いするんだもん! わたしもうすぐ十六になるのに」

「……そうかぁ、早いものだ。もうそんなに経つのだね」

 ユージーンは階段の途中スズランを見上げると、少し眉を下げて困った様に笑った。その琥珀色の瞳の奥は嬉しさと、何とも言えない哀愁に満ちている気がした。
 ユージーンは時折そう言った眼差しをこちらに向ける。そんな時決まって少し不安な気持ちになってしまうのだ。

「マスター…?」

 ほんの少し眉を下げてユージーンの顔色を伺った。その間僅かな沈黙が流れる。が、スズランの不安を掻き消す様にセィシェルがいつもの野次を飛ばしてきた。