「祝祭(フェスト)だからな。悪ぃけどスズ、飯食い終わったら親父を起こしてきてくれ」

「はぁい」

　先に食べ終わったセィシェルは食器を片付けがてら早々と厨房に戻って行った。スズランも少し食べる速度を早め、片付けを済ませる。奥の居間にある階段から二階に上がり、ユージーンの部屋の扉を軽く叩いた。

「おはようマスター！　起きてた？」

　するとすぐ様扉が開き身支度を終えたユージーンが出てきた。セィシェルと同様の金の髪はやや強めの癖があり、襟足で一つに結わえてある。無精髭(ぶしょうひげ)をはやしているが前髪から覗く優しげな目元に安心感を覚える。

「ああ、スズかい？　お早う。起きてたよ、今下に降りる所だったんだ。呼びに来てくれてありがとう、悪かったね」

「ううん、それよりマスターはちゃんと眠れた？　遅くまでお仕事してたって聞いて…」

「はは、この位平気さ。それにしっかり休ませて貰ったからね」

「本当？　それなら良かった！　今日は祝祭(フェスト)の初日なんでしょう？　たくさんお客さんが来るってセィシェルが……あ。それでね、レフさんも早く来てるみたい！　さっき倉庫に…」

「そうか、教えてくれてありがとう。それはそうと、スズは今日も店を手伝ってくれるのかい？」