轟々と耳の奥を震わせるのは強く降る雨の音。
それとも、心臓の鼓動が鼓膜を揺らす音。
どちらなのかわからない。
或いはそのどちらもか。
───真っ暗な脳裏に見知らぬ光景が幾つも浮かぶ。
豊かな緑と水源に囲まれた建物。
瑠璃色と橙の空に満天の星々が瞬いている。
見た事の無い不思議な植物の影から異国の服を着た幼子が姿を現す。
ああ、あれはスズランだ。
不安そうに辺りを見回すと人気のない薄暗い部屋の片隅で小さな身体を更に縮めて人知れず涙を零している。
今すぐ傍に駆け寄って抱きしめられたなら───
「こーら、スゥ!! またこんな所に隠れてたのね?」
「…っママ…! ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいの。でも、どうして逃げるの?」
「だって…! こわいもん」
「怖いからって逃げてばかりいたら、いつまでも怖いままなのよ? ママも手伝ってあげるからおいで、一緒にやってみよう?」
「でも…」
「大丈夫よ。……実はね、ママも子どもの頃はとっても怖かったの。でも今はぜんぜん怖くないもの!」
「ほ、ほんとう?」
「そうよ! ね、一緒にがんばろ」
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