「俺も一緒に食う。今の内食っとかないと後で忙しくなるからな」

「そうだね」

　今日の賄(まかな)い料理は魚介の出汁(だし)が効いた雑炊(リゾット)に、茸(きのこ)と燻製(くんせい)ハムのコロケッタスだ。朝からよく働いたスズランの空っぽの胃がクゥ、と音をならした。

「とっとと食おーぜ」

「うん、いただきまぁす！」

　揚げたての料理をぱくりと口に入れると凝縮された旨みがとろりと口内に染み渡り、文句なしに美味しい。何とも言えない幸せな気分になる。

「それ、美味いか？　そのコロケッタス、俺の試作品なんだけど…」

「んん…っすごくおいしい！　セィシェルが考えたの？」

「まぁ、まだまだ親父や料理長には叶わないけどな」

「そんな事ないよ、わたしこのお料理とっても好き！　また作ってね」

「ん……了解」

　満面の笑みを向けると照れたのかそっぽを向くセィシェル。そのまま並んで食事を取っていると倉庫に人影が見えた。

「やべぇ、料理長もう来たのか！　ゆっくり食ってる暇ねえな」

　セィシェルは一気に料理を掻っ込んだ。

「今日はレフさんも早いね」

　────レフはこの店の料理長だ。
　マスターのユージーンとは旧(ふる)い仲で、この店を立ち上げた当初から通いで勤めている。