「いや…! お願い離して!! ……わたし、今は何も考えられない…。ごめんなさいっ!」

「スズラン…!!」

 ライアがいつになく大きな声を出した。
 その声に驚き肩が竦む。

「お願いします…っはなして……わたし、どうしたらいいかわからない…。だってあなたは…」

「っ…分かった、手は離すから、俺の話…。聞いてくれ……ずっと、黙っていてすまなかった。本当はもっと早く言うべきだったんだ。今更謝っても許されないだろうけど……唯、俺はこれからもずっとスズランの事を守りたいんだ! 嫌ってもくれても構わない、俺はお前の事が…」

「っ…!!」

 思わずライアの手をふり払った。

「っ…スズラン……」

 謝罪にのせた拒否の言葉など聞きたくなかった。いや、拒まれて当然の身分だ。ライアはこの国の王子でいずれ国を取り纏めてゆく高貴な存在。方やスズランはただの平民なのだから。
 想いを伝えるなど以ての外、はじめから届く訳がなかったのだ。だからあの時ライアは言葉を濁したに違いない。どんなに強く想っていても伝える事さえ拒まれたのだ。
 息を飲む度苦しさが増す。いつの間にか目尻に溜まった涙を零すまいとなんとか耐えた。