むしろ今までの寛大な処遇に感謝すべきなのだ。

「……店に戻ろう。送るから」

「いい、です。一人で戻れます…」

「どうした…?」

 事件がまだ未解決だからだろうと理解はしているのにどうしても胸が痛む。

「警備さん…。警備さんは、アーサ王子……なの?」

「っ!?」

 敢えて確かめる様な問いを投げかけた。
 どんな答えを望んでいるかなど自分でも分からない。だが一瞬大きく狼狽えたライアに、昨日の出来事もこれまでの優しさも、全てスズランの勘違いに過ぎなかったのだと痛感した。
 あれらはライアの善意からなる行いに過ぎないのだろう。想いが通じたなど甚だしい誤解。恐れ多いにも程がある。

「……やっぱり、、そう、なんですね…。今まで気がつかずとは言え数々のご無礼、本当にごめんなさい…!! もう、この森にも来ません」

「…っ! スズラン!!」

 ライアの腕の中からすり抜け立ち上がろうとすると手首を強く掴まれた。

「離して、くださいっ!」

「待てよ! こっち向けって!! 俺の話を聞いてほしい…!!」

 話の内容ならば既にセィシェルから聞いてしまった。その上でライアと自分の身分の差を知り、すっかり望みを失ったのだ。