だが途中、ぴたりと足が止まった。
 こんな心境のままで、どんな顔をすれば良いのかも分からない。またどんな無礼を働くかも分からないのに。
 ライアに会いたい。会って顔を見て確かめたい。───いや、何を確かめるのか。

 葛藤に一歩も動けず蹲る様に屈み込んだ。

「スズラン…っ」

 背後に地面を踏みしめる足音が近付き、直後ふわりと暖かい腕に包み込まれた。

(…!!)

「……スズラン。泣いてるのか? いつからここにいたんだ…? こんなに冷えて」

 優しい声が耳元に届く。
 何故もっと早く気がつかなかったのだろう。少し低めで心地の良いこの声は紛れもなくライアのものであり、あの警備員と同じではないか。
 そして返答に詰まる。どう呼べば良いのだろう……まごつきながらやっとの事で声を絞り出す。

「……警備、、さん……」

「!! ……あ、ああ。駄目だろスズラン。また店を抜け出したのか? ……今一人になったら危ないんだ。いくら此処が安全だとしても、もう一人でこの森へ来ては駄目だ」

「っ…!」

 ライアが戸惑いがちに、やはり幼い子を諭す様な優しい口調でスズランを宥める。だが、もう此処へ来ては駄目だと言われて無性に悲しくなった。