セィシェルの言葉がスズランの心を抉る。
 本当にその通りだ。ライアが何故酒場(バル)に通っていたのか、何処の誰なのか。それどころか本人の歳さえも知らない。ライアという名の他は何も知らないのに何故こうも惹かれてしまったのだろう。

「何しにうちに来てたのかは知らねぇけど、今更この国の王子だなんて言われてどう信じろって…、あんな奴ただの女好きの変態にしか…」

「違う…、違うもん! ライアはそんなんじゃない……ライアはちゃんと考えてるよ!」

 それでも確かなのはライアがその様な人物では無い事だ。陰ながらこの国の為に奔走している。その誤解だけは解きたい。

「はっ! 考えてるって何をだよ…。お前騙されたんだぜ? それって信頼されてねぇからだろ!?」

「そ、そんな事ない! 騙すだなんて…、ライアはちゃんと話そうとしてくれてたもん…」

 今朝からずっと話があると言っていたのは、恐らく〝この事〟についてなのだろう。そうだと信じたい。

「じゃあお前は平気なのか? あいつは王族で、俺らはただの平民だぞ。そもそも住む世界が違うんだ。それでもお前はあいつがいいのかよ…!」

「っ…! そんなの、分かってるもん。でもライアは…」