言いながらセィシェルはスズランの額を軽く指で弾いた。

「っ?! いたぁい!」

「こっちやるなら別に店の方は来なくて良いからな。じゃーな」

 にやりと口角を上げたまま店の中へと入っていった。

「……っもう! お店も手伝うもん。お客さんたくさん来るって言ってたし、少しでも人手が多い方がいいはずだもん…。セィシェルって何でいつもあんなに意地悪なの? わたしってそんなに頼りないのかなぁ…」

 スズランは小さくため息を()らすも気持ちを切り替え、大量にある空き瓶の仕分けを始めた。以前何本か割ってしまった事があり、その時もセィシェルに散々怒られたので瓶は慎重に扱う。

 漸く仕分け作業に終わりが見え始め、一度昼食を摂りに店に戻る。店内は空腹を刺激する美味しそうな芳香で満たされていた。

「いいにおい!」

 スズランの声に厨房からセィシェルが顔を出す。

「おうスズ。裏終わりそうか?」

「うん。もう少し! 終わったら中のお手伝いするからね!」

「……はあ。とりあえず昼飯食えって」

「おなかへったぁ」

 促されてカウンターに席を取るスズラン。いつも通り渋い表情のセィシェルだが食事を運んで来ると隣に座った。