しかしユージーンはしっかりと頷いてスズランを見据えた。

「……うん、そうか。ありがとう、ちゃんと話してくれて。スズもそんな風に悩む年頃なんだね。それに、ずっと傍にいて欲しいと願っていてもそういう訳にはいかないんだな……」

「わたし、もうだまっていなくなったりしないよ。だってマスターはわたしにとって…っ!」

 最早父同然なのだと。そう伝えたかったのにおもむろに力強く抱きしめられた。

「ありがとう、スズ。本当にありがとう」

「マスター?」

「スズ…。俺もいつかちゃんと話すからもう少しだけこのままでいさせておくれ……」

「……うん」

 少し潤み声のユージーン。心配になり琥珀色の瞳を除き込むとやはりどこか哀愁に満ちている様な気がした。由ありげな表情にどうしても寂しさを覚える。
 ユージーンは珈琲を一気に煽ると、黙りを決め込んだかに見えたが意外な言葉を続けた。

「しかし彼は本当にスズを大切に想っているんだね。……彼ならば…、この状況を打開してくれるかもしれない…」

「え…? 打開ってどう言うこと?」

「……」

 聞き返すも今度こそ黙りなユージーン。上手く意味の繋がらない言葉はまるで噛み合わない歯車の様だ。