幼い頃からこの過程を見るのが大好きだ。
 スズランは泡状のミルクを甘く仕上げた珈琲の上に好きなだけ乗せた。ユージーンが茶請けにと出した焼き菓子をつまみ、二人で一息つく。
 ここでずっと気になっていた事を訊ねた。

「……ねえ。マスターとライアって以前からの知り合いなの…?」

「あ、ああ。あのお方……いや、彼は俺の幼なじみだった女性(ひと)のご子息なんだよ」

 そう聞いて漸く納得がいく。息子であるライアと何度も話をする位だ、その幼なじみとは余程仲の良い間柄だったのだろう。

「そうなんだ、ぜんぜん知らなかった! その人は今もお店に?」

「……いいや、もう来れないんだ」

 気軽に訊ねたつもりがユージーンの暗い表情に戸惑う。来れないとなると忙しいのだろうか。

「そうなの…。あ、でもライアが来てくれるって事は今もこの街に住んでるんでしょ?  また来てくれるといいね」

「そうだね、もう一度会いたいよ」

 そう言いながらもユージーンは悲しそうに眉を寄せて俯いた。これ以上は触れてはいけない様な気がしてスズランは話題を変えた。

「そ、そう言えばマスターもセィシェルもあんまり寝てないよね? お仕事もあるのに無理させてごめんなさい…」