「昨晩、スズがどうしていたかは聞かない事にするよ。ただ、もう絶対に無断で居なくならないでおくれ……でないと俺もセィシェルも…」

「マスター…っごめんなさい」

「マスター。やっぱり俺からも謝らせてくれ…!」

「……あ、貴方様に頭を下げさせるなど…っ! お願いします、どうか顔をあげてください」

 頭を下げるライアに向かって慌てた様子で声をかけるユージーン。ライアは漸く顔を上げると決まりが悪そうに口元をおさえた。

「いや。その…、こんな事言える立場ではないのだけど、スズランを傷付ける様な事は一切…」

「いえ…、あの……そこは信頼しておりますので…」

「あ、ああ。誓って…!」

 何やら妙な雰囲気の二人に困惑するスズラン。そもそも、ユージーンのライアに対する受け答えは普段のものとはだいぶ異なる。何故こんなにも謙る様な応対なのだろう。
 居た堪れない空気にスズランは思わず声を上げた。

「あの…っ! わたし、着替えてきてもいい…?」

「もちろんだよ。着替えたらまたおいで。スズの好きな珈琲ミルクを入れておくよ」

「ありがとう…、マスター」

「……俺もセィシェルと話をしたいんだが、上の部屋に上がっても良いだろうか?」