「───やめて! ちがうの…!! わたしが勝手にライアの所に行ったの…! ライアはわたしをここまで送ってくれただけで全然悪くないの!!」
「っ…スズ、その服はどうしたんだよ!」
スズランが見知らぬ服を着ている事に気づいたセィシェルに指摘を受ける。
「こ、これは雨で濡れたからライアに着替えを頂いて…」
半ば祈る様な気持ちで説明を続けると、セィシェルは漸く腕を下ろした。その間も視線はずっとライアを睨みつけている。
「くそっ! スズは俺のだ…! あんたには絶っ対渡さない!! っ…戻るぞ、スズ!」
「やっ、やだ、わたしまだライアとお話し…」
「こんな奴と話なんてさせねぇ!!」
スズランの言葉を遮るとライアとの間に割り入り、強引に腕を掴み上げるセィシェル。その反動で傘が弾き飛ばされ、二人は冷たく降る雨の元に晒された。
「嫌! 離してよ、セィシェル!」
「離すもんか! 俺と親父が昨日からどれだけ心配したと思ってるんだ!! 雨の中一晩中スズの事探して回ったんだぞ? 今だって朝一で警備隊に捜索の届け出をしようとして…」
言葉の一つ一つが胸に突き刺さる。
「ごめんなさい…! でもわたし…」